Ravi Shankar
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ラヴィ・シャンカール / ラヴィ・シャンカル
moriteppei.iconラヴィ・シャンカール、大好きなんだけど、どこらへんが彼の革新的なところなん? 主に音楽的な面について。それ以前のインド音楽の大家で今、聴ける人ってたとえばどんな人がいる? ラヴィの音楽に影響を受けた人たちはどんな人がいる?
もち.icon革新的だったポイントを音楽的に絞るとこんな感じ。
1. 音楽構造の再編集
従来のインド古典演奏は1ラーガで30分〜数時間かけてゆっくり展開するのが普通だったけど、ラヴィは録音や西洋のコンサート形式に合わせて短縮版を作ることがあった。
それでも即興性やラーガの文法は残し、「短くてもラーガの魅力が伝わる」構成を確立。
2. タブラとの掛け合いの強調
伴奏のタブラを単なるリズムキープ以上に扱い、ソロ同士の掛け合い(ジャガル)をライブの見せ場にした。これは西洋の観客にとってもわかりやすく、ジャズ的なスリルを感じさせた。
3. 他ジャンルとのハイブリッド
西洋のオーケストラ(アンドレ・プレヴィン指揮)や現代音楽家(フィリップ・グラス)と協演し、調性・リズム構造の異なる音楽を融合。
これが「ワールドミュージック」という概念が定着する前に行われていたのがポイント。
4. 録音芸術としての最適化
マイク位置・残響・音場を研究して、シタールをスタジオで最も美しく響かせる方法を確立。
それ以前のインド音楽録音は基本ライブ録りで、音質は記録目的レベルだった。
ラヴィ以前の大家(今も聴ける人)
アリ・アクバル・カーン(サロードの巨匠、ラヴィの盟友)
ヴィラヤット・カーン(シタール、より歌心を重視したガヤキ・アング様式)
ナキール・フセインの父 アラ・ラカ(タブラ奏者、ラヴィとも共演)
ビスマラ・カーン(シェーナイの巨匠、旋律の叙情性で有名)
Ustad Bade Ghulam Ali Khan(声楽、ラーガの表現力は伝説級)
これらはSP盤〜LP時代の録音が今でも配信やCDで聴ける。
ラヴィの音楽に影響を受けた人たち
ジョージ・ハリスン(ビートルズ) → "Norwegian Wood"以降のラーガ・ロック路線
ジョン・コルトレーン → 晩年のスピリチュアル・ジャズにインド音楽的モードを導入
フィリップ・グラス → 「Passages」で共作し、ミニマル音楽にインド的反復構造を融合
アヌーシュカ・シャンカル(娘) → 伝統と現代エレクトロを横断する活動
パンドット・ハリプラサード・チャウラシア(フルート) → 国際的コラボの方向性に影響
もち的に言うと、ラヴィは「構造を編集できる古典音楽家」だったのが革新的だった部分。ただの伝統継承者なら構造は壊さないし、ただの革新者なら文法を破るけど、彼は文法を守ったまま、外部世界に適応させる形で編集した。この立ち位置は、当時のインド音楽家の中ではかなり特異だと思う。